いつも多くの人がパリについて語りたがる。
昔から有名人の移住先だったパリ。『パリのお洒落マダムがどーだこーだ』『パリジェンヌの素敵な生き方だの暮らしぶり』だのといった記事の見出しがそこかしこに踊る。自分的には「また来たか。はい、はい」みたいな気分になる。
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今やパリでメジャーなトップ5の男性名は『モハメッド』だ。まあ、サッカー選手達とか見たって分かるだろう(笑)ざっくり言ってパリの3分の1くらいは移民系の有色人種なのだ。それなのに『パリのマダム』と言えばほとんどの場合『白人のブルジョアおばさん』みたいなのが出てくる。どんだけフィルターかけてんの(笑)
ほとんど『東カレ』世界の港区女子だけの東京感やん!
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というわけで、今回も日本人が知らない巴里の横顔を絡めて書いていく。
運河沿いを走る
三日目の朝も走る。
スターリングラードの雑踏の隅に仰々しいピザ屋があるのだがその隣から運河がそれに沿って走る。
サン・ミッシェル辺りの河岸とは違い、随分穏やかだ。セーヌ川河岸や運河沿いには船上カフェがある。ノートルダム横の船上カフェの幾つかではジャズが奏でられていてそのうちの幾つかには通った時期があった。今や観光客でごった返してしまって僕のかつての隠れ家もすっかり台無しだ。インスタ映えとやらは風情を台無しにすることも多い。僕はそういう理由でインスタグラムはやらない。『そもそもインスタグラムなんてのは虚栄心を満たす道具にしか過ぎない』などと言い出したらもう老害に数えられるのだろうな。
さて、この季節は暑すぎず走るには気持ちがいい。また、この辺りは意外にも治安がそれほど悪くなさそうでもある。BCに戻って、シャワーを浴びてから朝食を食べてもまだ8時頃だ。
マルシェ(市場)に行ったり、サントノーレ側に繰り出したあと、ルーヴル横のカフェマルリーに行こうと思ったがデモをやっていて騒々しいので気が変わり、少し離れたエリック・カイザーというパン屋の2階で朝食を食べたが、完全にハズれだった…
コメディーフランセーズ
けれども、コメディーフランセーズには早めに入ることができたので、ここで食後のエスプレッソをいただくと、気分が上がってきた。
この日の演目は「Angels in America」で、LGBT&人種問題が絡む自分が苦手とする、重く複雑なテーマとされたエイズ問題が浮かび上がった頃の話だ。
興味を持った人のためにあらすじを述べるなら内容はおおよそこんな感じ。(引用元 ウィキペディア)日本でも新国立劇場などで公演されていた。
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自分が演劇に関わっていた時代にトニー・クシュナーが発表していた作品なのだが、当時の自分はエイズに関する恐怖心もあり、かなり偏った見方をしていた。今の歳になってようやく冷静に見れるようになったというのが正直なところである。古典劇を得意とするコメディー・フランセーズの役者たちだが、この現代劇も真に迫った演技で観客を魅了していた。この日は役者の一人がリタイヤする最終日でもあり、アンコールが鳴り止まず、演者と観衆の一体感が半端なかった。勿論、老齢の俳優の演技も素晴らしかったのだが、演出や大道具、照明に至るまでかなりの練度があり、上手く作り込まれていた。舞台をもっとも近く感じられて俯瞰しやすい席として正解だった。総合芸術としての演劇はまだまだ見ごたえのあるものだと感じられた。映画のようなエンタメと違う、息遣いとか波動が感じられる。
デジタルとは違う臨場感は人と人の繋がりを感じられる。こういった文化活動こそ、人を人と成すのだと僕は思っている。この部分に触れることこそ大都市を巡る醍醐味とも思う。
都詣で(みやこもうで)で思うこと
さて、観劇を見たところで色々と思うところがあったので、その考えをまとめるべく朝ランをした運河沿いへ戻り、陽光を浴びられる船上カフェで寛ぐことにした。アペロルをスパークリングワインで割るアペロル・スピリッツが流行ってるぽいのでそれに習った。オレンジの液体はやや淀んだ運河を背景にするとやたら映える。
ここは上の階とデッキ側がカフェで、半地下が本屋となっている。ナイス!
輝ける文化都市パリからEUの中心地ブリュッセルに移り住んではや24年。自分の現在地、家族の現在地、そして未来を見極める必要がある。自分は概ね15歳位に描いた未来予想図をもとに人生を進み、微調整を入れながら今に繋げてきた。自分が当時描いた生活ぶりと現在は全く違うものになったが、人生に退屈はしていないし未来にも絶望していない。
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翻って、我が子達はどうだろう。僕よりものびのびと育ってきたに違いないが、自分で人生を開拓していくような気概はまだなさそう。迫りくる未来は混沌としている(これについては人それぞれ思うところがあるだろう)。いずれにせよ、自分の道は自分で進むしかない。ただし、ブリュッセルという中途半端な中規模都市にはない「洗練された文化圏」が素晴らしいことと、また想像を遥かに超えるような大自然の真っ只中で得られる感動についても知らせないといけないと思う。
例えば中途半端な場所でのキャンプは心を揺さぶられるような感動を与えないし、森林限界を超えないようなハイキングは散歩とたいして変わらない。やはり、何事も高いレベルのものを見ておくことが大事。子どもたちは日本という稀な存在の大国(といってもポルトガル化しつつあるが)をルーツにしつつも、ベルギーという欧州内でやや影の薄い場所で育ち、どちらかと言えばベルギー人の価値観を身につけている。けれども、デジタル化の進んだこの21世紀、いつでもどこでも同じような情報が手に入りそうな中庸全盛期の今こそリアルで濃密な刺激を与えたほうが良いはずだ。
と妙に力んでしまうのは都詣で(みやこもうで)の影響か、パリへの遠征は何かと有意義と思い込んでいるのだった…
さて、チョコっと話すか。
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